2002年4月18日、米国メリーランド州シルバースプリングで開催された世界総会春季理事会において「セブンスデー・アドベンチスト・平和を求める声明文」決議されました。
セブンスデー・アドベンチスト・平和を求める声明文
私たちは不安定で危険に満ちた世界に住んでいる。世界における最近の諸事件は人々の間に深刻な無力感と個人的・集団的暴力への恐怖を生み出し、世界の数え切れない人々が戦争と恐怖にさいなまれ、憎しみと脅迫によって抑圧されている。
全面戦争
前世紀の半ばから、人類は全面戦争の時代に生存している。神の摂理がなければ、全面戦争は地球上の文明を消滅させてしまう可能性を秘めている。核兵器や生物化学兵器といった大量破壊兵器が人口の密集地にねらいを定めている。すべての国家・社会が戦争に動員され、また標的とされている。もしこのような全面戦争が勃発するなら、未曾有の暴力と破滅がもたらされるであろう。たとえ技術の進歩によって正確に目標を破壊することが可能となり、民間人への被害が最小限に抑えられたとしても、戦争を正当化することは困難である。
新しい次元
国連やさまざまな宗教団体が21世紀の初めの10年間を暴力に代わる平和と安全の10年と宣言したにもかかわらず、組織された国際テロという陰険な暴力が出現した。テロリズムそのものは目新しいものではないが、世界的な規模のテロリスト組織は新しいものである。もう一つの新しい要素は、神の命令のもとで文化戦争、あるいは「宗教」戦争を装ってテロリストの行為を正当化しようとする動きである。
国際テロの台頭によって明らかになるのは、戦争を引き起こすのが民族や国家だけでなく、さまざまな背景を持った人間であることである。セブンスデー・アドベンチスト教会の指導者のひとりが1世紀前に指摘している通り、「人間の人間に対する残虐行為は、人間の最大の罪である」(ミニストリー・オブ・ヒーリング137ページ、改訳)。確かに、人間の性質は暴力に訴える傾向がある。キリスト教の視点に立てば、こうした残虐行為はすべて善と悪の大争闘という宇宙的な争闘の一部である。
テロリズムは神の観念を食い物にする
テロリスト、ことに宗教を動機とするテロリストたちは、自分たちの主義が絶対であって、無差別に人命を奪うことも完全に正当化されると主張する。彼らは神の正義を行っていると主張するが、その一方で神の大いなる愛を全く行っていない。
さらに、このような国際的テロリズムは宗教自由の精神と全く相容れないものである。それは政治的・宗教的極端主義や原理主義的狂信に基づくもので、特定の宗教的信条や世界観を強要し、自らの信条に従わない者たちを滅ぼそうとする。尋問や恐怖によって人々に自らの宗教観を強要することは、神を悪と暴力の偶像にすることであり、神を搾取し、操作することである。その結果、神にかたどって造られた人間の尊厳が無視されることになる。
国家や国民が暴力や恐怖に対して軍事的手段を用いて自らを防衛することは避けがたいことであり、時には短期的な成功をもたらす。しかし、暴力的手段を用いることは社会における分裂という根深い問題に対する長期的な解決とはならない。
平和の柱
キリスト者の立場また実際的な立場からすれば、永続的な平和には少なくとも次の四つの要素、つまり対話、正義、ゆるし、和解が欠かせない。
【対 話】 非難と争いの代わりに対話と議論が必要である。永続的な平和は暴力的な手段からではなく、交渉、対話、あるいは政治的な妥協から生まれる。長期的に見れば、対話は軍事力にまさる。キリスト者は、聖書に教えられているように、いつでも「論じ合う」姿勢が必要である。
【正 義】 不幸にも、この世界は不正で満ちており、不正は争いを引き起こす。正義が平和をもたらすように、不正は戦争をもたらす。貧困と搾取は不満と失望を、さらには絶望と暴力を生み出す。
対照的に、「神のみ言葉は、他の階級を圧迫し苦しめて一つの階級だけが豊かになる政策を許していない」(ミニストリー・オブ・ヒーリング163ページ)。
正義は人権、とりわけ人間の最も深い欲求であって、すべての人権の基礎である宗教の自由を尊ぶことを要求する。正義は非差別、人間の尊厳と平等、生活必需品の公平な分配を要求する。経済、社会政策は一方で平和を、他方で不満を生み出す。セブンスデー・アドベンチストは宗教自由を支持・促進し、教会の組織と部局を通して貧困と境界化を軽減するために働く。教会によるこのような努力は徐々に怨恨とテロリズムを軽減する。
【ゆるし】 ゆるしは、損なわれた人間関係をいやす上で必要なものである。それは、イエスが弟子たちに教えられた祈りの中で強調されている(マタイ6ノ12)。しかしながら、その集団的、社会的、国際的な側面を見逃してはならない。平和を来らせるためには、過去の重荷を下ろし、踏み慣れた戦場を乗り越え、和解に向かって努力しなければならない。そのためには、過去の不正と暴力を忘れ、報復することなくゆるすことが要求される。
罪深い人間の本質とその結果としての暴力ゆえに、恨み、憎しみ、復しゅうという悪しき循環を断ち切るためには、何らかのゆるしが必要である。ゆるしは人間の本質と相容れないものである。復しゅうに復しゅう、悪に悪をもって報いることは人間の性(さが)である。
したがって、まず教会の中にゆるしの文化を育てる必要がある。キリスト者として、また教会指導者としての私たちの務めは、個人や国家が過去の暴力の足かせから解放され、毎年、毎世代、過去の経験によって身についた憎しみと暴力を拒否するのを助けることにある。
【和 解】 ゆるしは疎外と敵対に陥った関係に和解と回復をもたらす基礎である。和解は協力と調和と平和に至る唯一の道である。
私たちはキリスト教会とその指導者に和解の働きを推進し、善意と寛容とゆるしの使者としての役割を果たすように求める(2コリント5ノ17~19参照)。これはいつでも困難で、問題の多い働きである。途中で待ち受ける多くの政治的なわなを避ける努力をする一方で、迫害、差別、貧困、不正からの自由を高らかに宣言しなければならない。暴力、搾取、テロに遭う危険のある人々を保護することはクリスチャンの責任である。
生活の質を高める
舞台の背後でなされる宗教団体と個人の静かな努力も計り知れない価値を持つ。しかし、それだけでは十分ではない。「私たちは単なる霊的な環境の生き物ではない。私たちは自分の生き方を決めるあらゆることに積極的な関心を持ち、この地球の幸福に関心を寄せている」。キリスト者の和解の働きは、「人間の尊厳と平等と一致が神の恵みを通して回復されるのに貢献するし、また貢献するものでなければならない。人間はこの神の恵みの中にあって互いに相手を神の家族の一員と見ることができる」(SDA世界総会総理、ヤン・ポールセン牧師)。
教会は霊的貢献のためだけにあるのではない。それも重要であるが、人々の生活の質を高め、平和を実現するために貢献すべきである。キリスト者と教会が、過去において、また最近、積極的にかかわり、許容し、あるいは正当化した暴力的行為について、私たちは悔い改める必要がある。私たちは全世界のキリスト者と善意の人々に対して、平和を実現し、これを維持することによって、問題を生み出すのでなく、問題を解決するために積極的に働くように求める。
平和を実現する人たち
セブンスデー・アドベンチスト教会は来るべき神の国の一致のために役立ちたいと願っている。これは対立のなかにある当事者間に和解を促進するための架け橋となることを要求する。預言者イザヤは言う。「人はあなたを『城壁の破れを直す者』と呼び/『道を直して、人を再び住まわせる者』と呼ぶ」(イザヤ書58ノ12)。平和の君イエス・キリストは、「平和を実現する人々は幸いである」と言われる(マタイ五ノ九)。
教育による平和の実現
セブンスデー・アドベンチスト教会は、世界で2番目に大きな教会学校の組織を運営している。6000以上にのぼる初等・中等学校、カレッジ、大学の各校は、各学年度の一週間を、さまざまなプログラムを通して尊敬心、文化、非暴力、平和、問題解決、和解について学ぶ時間とするように求められている。「アドベンチスト」として、社会的一致と平和の実現に貢献するのが目的である。そのため、教会教育部ではこの平和計画を実現するためのさまざまなカリキュラムと教材を準備中である。
教会員に対する非暴力、平和、和解の教育は継続的なものでなければならない。教会牧師は講壇から平和、ゆるし、和解の福音を説くように求められている。それは人種、民族、国籍、性別、宗教によって生じるさまざまな障害を克服し、個人、集団、国家間に平和的な人間関係を生み出す。
キリスト者の希望
平和を実現することはきわめて困難な業のように思われているが、それは人間が新しく生まれ変わることによって可能である。あらゆる暴力・テロリズムは、実際には神学的な意味でのキリストとサタンとの闘争の一側面である。キリスト者には、不法の秘密の力である悪が最終的に平和の君イエス・キリストによって征服され、この世界が刷新されるという希望がある。これこそ私たちの希望である。
戦争と暴力に満ちた現実の中にあって、旧約聖書は新しい天と地を待望し、新約聖書と同様に、闘争と恐怖の悪循環が終止符を打ち、武器が消えて農具となり、全地が海を覆う水のように平和と神を知る知識、神の愛で満たされるときが来る、と約束している(イザヤ書2ノ4、11ノ9)。
私たちはその時まで、あらゆる関係において、自分を愛するように人を愛するように求めている黄金律に従い(マタイ7ノ12)、神を愛し、神が愛されるように人を愛する必要がある(1ヨハネの手紙3ノ14、15、4ノ11、20、21参照)。
※世界総会オフィシャルサイトには、ここにご紹介した以外に多くの声明文が公開されています。あわせてご覧下さい。
http://www.adventist.org/beliefs/statements/

